下顎の神経を移動させてインプラント体を埋入する1

インプラントが成功する条件として、患者さんの骨がしっかりしているという項目があります。

だからこそ、今までは骨がしっかりある人を対象に、インプラント治療が行われてきました。しかし本当に困っているのは、歯周病で骨まで溶けて吸収されて歯がグラグラしている方や、長い間入れ歯を使っていたために、生理的咬合圧がかからず骨が吸収されてしまっている方です。つまり、歯と骨のなくなってしまった人こそ切実にインプラントを必要としているのです。

上顎に比べて比較的硬くて大きい骨である下顎については、骨の吸収があったとしてもインプラント埋入が可能なケースが多いです。骨はある程度の高さと厚みがないとインプラント体を骨にしっかり固定することができません。しかし、下顎に限っては骨の高さが足りなくても長さ7ミリのインプラント体を埋入することで、しっかりと固定することが可能です。

下顎に、インプラント体を埋入する場合に、障害となるのが臼歯部の骨が著しくなくなっているケースです。ここには、おとがい孔と下顎管があり神経が通っています。この神経は下唇の知覚を司っており、インプラント体を無理に深く埋入すると神経の束を傷つけます。

例えば、下顎臼歯部(奥歯)で下歯槽神経(下顎管)までの骨の高さが6ミリもない場合は、インプラントを埋入する前に、神経を一時的に引っ張り出して移動させます。この治療を「下顎神経移動術」といいます。