チタンが骨とくっついて離れない2

前回、ウサギの骨の中の血流を調べるために、骨にチェインバーという小さな顕微鏡を取り付けるという話をしました。それまでは、金や真鍮などでできたチェインバーを取り付けていましたが、プロジェクトに参加している教授が「チタンがいいのではないか」とアイデアを出しました。

チタンが生体に馴染みやすい性質を有していることがわかっていましたし、小さな顕微鏡に加工する技術も出来ていました。そこで、ウサギの脛骨にチタンで作ったチェインバーを取り付けることになりました。

骨の中には骨髄があり、その中には太い血管が通っている血流があります。骨髄の周囲には硬い皮質骨があり、骨の形態を維持していることが観察できました。

これにより、骨の中の細胞は、大きな血管から白血球や血小板を取り込んでいて、骨が折れると、骨膜の細胞と骨の中になる血管網によって治癒するということがわかりました。
骨の中の血流と細胞の関係によって骨折が治癒することがわかりましたので、別のウサギにも同様のことが起こるかを観察するために、最初のウサギの骨に取り付けた顕微鏡をはずそうとしました。なにしろ、高価なものなので、一回の実験で使い捨てにするわけにはいきません。

ところが、外そうとしても、なかなか外れません。
骨を切って外に取り出し、機械で強引にひっぱって取り外そうとしましたがやはり外れません。よくよく見ると、骨とチタンが密着していて、ほとんど骨と同化しているかと思えるまでにくっついていたのです。