チタンが骨とくっついて離れない1

整形外科医のブローネマルク博士は、骨の治癒の原理を研究していました。
どうして骨折した骨がふたたびくっつくのか、その治癒がどのように行われているかを解明しようと多くの実験を行っていました。

骨の内側は空洞で、その中は骨髄で満たされています。その中を多くの血管が通っています。博士は、この細い血管の中を赤血球や白血球などがどのように循環しているかを研究していました。ちなみに、この微細還流をマイクロ・サイキュレーションといいます。
手始めに、ウサギを使ってマイクロ・サイキュレーションを確認する実験を行ないました。

ウサギの脛骨に穴を空けて、骨の表面の皮質骨という硬い骨の部分を薄く削ります。中が透けて見えるくらいに削ると、骨の中には海綿骨があるのが見えます。その海綿骨の中を血液がどのように流れているかを観察することで、マイクロ・サイキュレーションの実態を確認しようと考えました。

骨の中の血流を調べるために、骨にチェインバーという小さな顕微鏡を取り付けました。このレンズを覗いて血流を観察しようと思ったのです。当然、ウサギが生きている状態で観察する必要がありますので、生体に影響を与えない金属で作った顕微鏡でなければいけません。