インプラントの世界第一号は犬だった1

ブローネマルク博士は、チタンが生体にくっつくという性質を生かしたいと考えました。
何に利用するのが最適なのでしょうか。

整形外科医だったので骨折などへの利用も考えましたが、まずは小さくて身近なものから始めるのがいいと、歯への利用を思いつきました。

もともと、歯の根の代わりにインプラントを入れるという考え方は、ヒポクラテスの時代からありました。当時は、金や鉄などを使っていましたが、生体にくっつかないために歯が抜け落ちてしまいました。

1940年代になりブレード・インプラントやサブペリオスティール・インプラント(骨膜下インプラント)などの技術が開発されていきました。顎の骨を覆っている歯肉を骨から剥離して、顎の骨の形の印象を採って模型を作ります。その模型上で金属のフレームを作り、歯茎をふたたび開いてフレームを設置して縫い合わせ、歯肉のキズが治ったところで、義歯を植えていくというものでした。しかし、技術が難しく大手術になるために簡単にはできませんでした。それ以上に普及しなかった原因としては、科学的根拠が乏しいことが挙げられます。成功と失敗が偶発的で、安定していません。その後、インプラント体をセラミックやサフィアなどの素材に変えて実験が行われましたが、同様の理由から普及には至っていません。