インプラントってどんな治療なの?怖くないの?2

現在臨床で応用されているインプラントには、歯根型インプラントの他に、ブレードタイプと呼ばれる板状のインプラントと、骨膜下インプラントと呼ばれる馬の鞍状のインプラントを歯槽骨の上に直接乗せる方法などがあります。

ブレードタイプインプラントの場合は、その板状の形態から薄い歯槽骨などに適しているのですが、インプラントを植える溝を歯槽骨に形成する手技が比較的複雑であるため、熟練した歯科医でないと溝の形成にブレが生じやすく、インプラントを植えた直後の固定安定が悪くなり、インプラントと骨が理想的に結合しないケースもあるのです。

骨膜下インプラントは、インプラント自体を個別に制作するため、一度口の中の粘膜を剥離して顎骨の型をとる必要があります。
そしてインプラントが製作できたら再度粘膜を剥離して顎骨の上にインプラントを乗せて、粘膜でインプラントを覆うわけです。手術も大がかりになりますし、型取りがうまくいかなければインプラントがまったく合わないという結果にもなりかねません。よほど熟練した歯科医でないと成功率は低いようです。

インプラントってどんな治療なの?怖くないの?1

インプラントとは、大きな意味では生体内に植え込む人工物を指します。歯科の領域では歯科インプラントとか口腔インプラントと呼ばれます。
歯が抜けた部分の歯槽骨(歯を支えている骨)に人工の歯根を植えて、その歯根の上に人工の歯冠を制作して、なくなった歯が存在していた頃の環境を再現するという治療法です。

歯科インプラントは、長い歴史の中で様々なタイプが開発されてきました。
そして現在はチタンという安定した金属を母材にした歯根型(棒状あるいは砲弾状の形態にスクリューなどが形成されているタイプ)がすばらしい成功率を発揮しています。
これによりインプラント治療は歯科の重要な治療の一つとして世界の歯科医から認められています。

この歯冠型インプラントは、母材であるチタン表面の生体内安定性を高めるためにミクロの凹凸を付けたものや、生体材料であるセラミック系素材(ハイドロキシアパタイト)で被覆したものなど様々なタイプが臨床に登場しています。
ほとんどのタイプは完成度が高いシステムになっていますので、患者さんの歯槽骨や顎の骨の状態、かみ合わせの環境などによって使い分けられています。

人工歯の素材にはセラミックとハイブリッドセラミックがあります

かぶせ物(上部構造)はハイブリッドセラミックと通常のセラミック製のものがあります。セラミックとハイブリッドセラミックには、それぞれ一長一短があります。

セラミックはご存知かもしれませんが、陶器のような素材です。
石のようにかたく、物性は安定しています。
歯垢もつきにくく、ついてもとれやすい特長があります。
まったく変色もしません。

しかし強度はある反面、まれに堅いものを噛んだときの衝撃で割れて欠けてしまうことがあります。一概にはいいづらいところではありますが、欠ける可能性は3%くらいと試算しています。

ハイブリッドセラミックは、プラスチックが混入しています。
だからハイブリッド、というわけです。
セラミックと違って、欠ける心配は少ないです。しかしちょっとずつすり減る傾向があります。また若干ですが、吸水性があるため、タバコのヤニなどがつきやすいですし、コーヒーやお茶などの色素が沈着しやすい弱点があります。

一般的には前歯には審美性の高いセラミックを使うことが多く、ハイブリッドセラミックはコストを抑えるためにあまり人目に触れない奥歯に使うことが多いです。

インプラントは、医療費控除の対象にはなりますので、還付金を含めて、費用についての説明は、歯科医からきちんと聞くようにしてください。

インプラントの費用の内訳と適正価格の実際は?

インプラントの適正価格はいくらなのでしょうか。一般的な目安を言えば、一本あたりの費用は約30~40万円だと言われています。

もちろん患者さんの状態によって治療法にも差が出ますから、一概にこの費用ならば妥当とは言い切れません。

しかし、平均的な場合、このくらいはかかるはずだと思います。
費用の内訳を見てみましょう。明細としては大きく4つに分かれます。

1. 手術代
2. インプラント本体の費用
3. 土台の材料費、加工費
4. かぶせ物(上部構造)の材料費、加工費

インプラント本体(フィクスチャー)は、日進月歩でいろいろなグレードがあります。例えばスウェーデン製の品質のよいものであれば、1本20万以上します。

土台は単純そうにみえて2万円程。かぶせ物はそれ程高額ではありませんが、
セラミック製であれば1本7万円ぐらいになります。インプラント本体と土台とかぶせ物は、本数に比例して費用は加算されていきます。

また同じ3本のインプラントでも、ブリッジタイプにするか、単独タイプにするかで、数十万の違いが出てきます。もちろん安いほうがいいという話ではなく、ブリッジタイプですむ場合と単独タイプにしなければならない場合があります。

あまりにも安いインプラントには罠があるかもしれません

インプラント治療をするにあたって費用は大事なポイントです。
不安や怖さを抱える多くの患者さんにとっても切実な問題だと思います。
これから、費用の不安を解消するための記事を書きたいと思います。

インターネットで「インプラント、1本○万円」なんて広告を見かけることがあります。
「なぜそんな安い金額でできるの?」「一体どんな治療を行っているの?」と疑問が次々と浮かんできませんか?

それと同時に「そんな低価格の治療を受けて、大丈夫なのかな?」と不安に思う気持ちもわいてくるかもしれません。
決して安いこと自体を否定しているのではありません。安くてよい治療が患者さんに施せたら、それに越したことはありません。インプラント治療の普及にもつながり、大変いいことだと思います。

インプラント本体そのものの値段もですが、リスクを減らすための事前の処置や検査にもそれなりの費用がかかります。
品質の高い材料を使用し、適切な手術を受けるとなれば、最低ラインの価格があるのは仕方がないことなのです。

それだけに、最低ラインの価格を大きく削った宣伝を見ると、どこかに安さのカラクリをつくる手抜き的な要素が潜んでいるのではないか、ついそのように疑ってしまいます。

CT撮影の被ばく量

インプラントは、非常にすぐれた治療法です。
失われた歯がもう一度よみがえり、まるで自分の歯のように、食べ物を美味しく噛めるようになるからです。まさしく第2の永久歯が生えてきた感覚で、生き生きとした毎日を送れるようになります。あなたのライフスタイルまでも劇的に変えるほどのすばらしい治療法なのです。

だからこそ多くの歯科医、この治療法に注目しているのです。
そのインプラント治療に欠かせないのがCT撮影です。

CT撮影と聞くと、CT撮影の被ばく量はどうなのかと、疑問を呈する方もいるのではないでしょうか。健康にどのような影響を及ぼすのか、心配される方も実際にいますので、お教えしましょう。

参考までに申し上げれば、歯科医院でのCT撮影の被ばく量は、およそ胸のレントゲンを撮影するのと変わりありません。大変少ないレベルです。

ピンとこない人もいると思いますが、この被ばく量は、東京・ニューヨーク間を飛行機で往復した際に、自然に受ける放射線量と同じです。

アメリカへの海外旅行1回分にすぎません。
普通の総合病院で、同じアゴの部位のCT撮影をすると、被ばく量は20倍になります。歯科用CTは非常に被ばく量が少ないのです。
被ばく量についての心配は、ほとんどありません。

アゴの内部の血管や神経を傷つけないためのCT撮影

インプラント治療はどんな歯科医でも簡単にでき、これっぽっちの危険もない夢の治療法だというつもりは全くありません。しかるべき技術や知識、
治療設備が備わってこそ、安全であり安心であることを、皆さんにわかっていただきたいと思います。

安全な治療を実現するためには、設備の充実が欠かせません。
重要視すべき設備とは、何を置いてもCT撮影のためのCTスキャナー(X線コンピュータ断層撮影装置)です。

例えば、ヒトの下アゴの内部には、下顎管(かがくかん)と呼ばれる管が通っています。

アゴの両サイドに左右対称に通っているこの管の中には神経や動脈や静脈が通っています。この管を万一誤って傷つけたらどうなるか。
マヒを残してしまったり、大出血をしたりします。
歯科医は、この管を傷つけないように慎重に手術を行います。

この下顎管を確実に避けるための方法は1つ。CT撮影で患者さんのアゴを撮影し、その位置を確認するしか方法はありません。

むろん歯科医もプロですから、CT撮影をしなくても下顎管の位置は、おおよそ見当がつきます。ただそれですと、インプラントを埋め込む際、下顎管を傷つけないよう気をつけるあまり、安全策をとって浅くしか埋め込めなくなります。

CT撮影で下顎管の位置をしっかり認識できれば、下顎管を避けつつ、インプラントを最適最良の位置と深さで埋め込むことができるというわけです。

設備やアフターケアの充実した歯科医院選びが失敗を防ぎます。

骨とくっついて、かぶせ物(上部構造)も入れたが、後からインプラントがぐらぐらになったという事例をみていきましょう。
インプラントがしっかりと骨とくっつき、かぶせ物も入れたけれど、後からぐらぐらになるケースです。せっかく全てが順調に運んだのに、こうなっては元も子もありません。

なぜそんなことが起きるのでしょうか。ほとんどが歯周病によるものです。
対処法としては、メンテナンスを適切に行うことです。歯科医側の配慮が非常に重要です。

次に手術中に神経や血管を傷つけてしまった場合です。日本中、あるいは世界中でインプラントの訴訟が実際にありますが、そういったときは、大抵このトラブルが起きたときのようです。

インプラントそのものを埋め込むのはアゴの骨だとはいえ、その近くには必ずといっていいほど、神経や血管が走っているものです。

誤ってそれらを損傷してしまうことは、絶対に避けなければなりませんし、また避けられることです。治療にあたった歯科医の経験不足や技術不足、レントゲンの読影ミス、そして、もっとも重要なCT撮影をしていないことなどです。

しかるべき知識と技術を持った歯科医からすれば、このような失敗は考えられません。
読者の方々も、こんな話をすると身ぶるいをして、「やっぱりインプラントは怖い」と二の足を踏んでしまうでしょう。ですが、このような失敗は極めて確率が低く、CT撮影をしていれば、まず防げるものなのです。

骨とくっついてくれない原因とその対処法2

インプラント治療も、医療という側面上、100%失敗がないと言い切ることはできません。
いくつか考えられる失敗例をみてきましたが、引き続きインプラントが骨とくっついてくれない原因をみていきましょう。

骨とくっついてくれない原因のひとつとして患者さんが糖尿病をお持ちでったり、ヘビースモーカーであったりする場合に起こりうるケースです。
そのような方々に対して、適切な措置や対処を考えない医師側の人為的ミスが、失敗を生みます。

そもそも糖尿病やヘビースモーカーの方は、通例よりもインプラントの密着する確率が下がる傾向にあります。
その対処方法としてはHAインプラントを使う方法が考えられます。

糖尿病の方は、ヘモグロビンA1c(糖尿病のコントロールの指標。5.8以下が健常とされています。)の値が7を切るまで十分にコントロールすることが望ましく、場合によっては、手術をしないという勇気ある撤退も必要です。

あくまでもケースバイケースですが、どんな決断をするにせよ、歯科医の強い意志と確な判断が要求されます。

また約1%弱の確率ですが、糖尿病やヘビースモーカーでなくても、インプラントと骨がうまくくっつかないこともあります。
この場合、原因は不明ですが、再手術すればほとんどの場合、うまくくっついてくれます。

骨とくっついてくれない原因とその対処法1

インプラントを埋め込むことはできたが、骨とくっつかなかった場合をみていきます。
せっかくインプラントを埋め込んだものの、骨とくっつかなかったとしたら、
歯科医にとっても患者さんにとっても、とても残念な結果としかいいようがありません。そうなってしまう原因もまたいくつかあります。

第1の原因は、ドリルの熱によるものです。インプラントを埋め込むための穴をアゴの骨に開ける際、ドリルの回転数が高すぎて熱を発し、骨細胞が死んでしまうことがあるのです。実は、骨細胞はかなり熱に弱く、42℃程度で死んでしまいます。

そうならない対処法は、骨を削る際に十分に注水して、冷やしながら行うことです。
このミスについては歯科医の初歩的な技術不足といえます。

第2の原因は、患者さんの骨密度が低すぎて、骨細胞がインプラントをしっかり取り囲んでくれなかった場合です。この対処法は、骨をコンデンス(濃縮)して骨の密度を上げたり、HAインプラントを使うことです。

HAインプラントというのは、通常のインプラントがチタン100%でできているのに対し、
材質は同じチタンでも表面に特殊なコーティングが施されており、骨とインプラントが密着するまでの時間も通常のインプラントよりも短くてすむ特性もあります。