正しい治療を行なえばという条件におけるサージカルテクニック、つまり歯科医の治療技術も当然大きなウエイトを占めます。
インプラント体の形を見ると、下のほうはねじ山が切ってあるスクリューになっていて、上部は少し膨らんだ形になっています。この少し膨らんだ部分をしっかり皮質骨に固定されることが大切です。
この場合、いかに皮質骨を壊さないで固定させるかという技術が必要になります。
今までは、皮質骨の内側の海綿骨のところでインプラント体の上部を固定されるほうがいいのではと考えられていました。しかし、多孔性の海綿骨のみにしっかり初期固定(プライマリー・スタビリティ)するのは難しいのです。どうしてもしばらくするとグラグラ揺れてきます。インプラント埋入の失敗で多い、抜ける、グラグラするといったトラブルは、インプラント体の初期固定不全が原因であるケースも見受けられます。
それゆえ皮質骨にしっかりと固定する技術が求められます。
インプラントに向く患者・向かない患者3
海綿骨が少なく皮質骨だけが厚く、削っても血液も出ないという人もいます。血液が骨を作り治癒するので、海綿骨がなければいけませんが、海綿骨が少なく硬い皮質骨だけになってしまい血液も出ない骨の質がよくないケースでは、オッセオ・インテグレーションが獲得しがたいといえます。
これらの条件ではインプラント治療は難しいといわれていましたが、最新の技術開発により可能になっています。
以前はインプラント治療を受けられる人が限定されていましたが、現在は技術の進歩により、ほとんどのケースで可能になっています。その意味では、インプラントに向かない人はいなくなっているといっても過言ではありません。
インプラント治療はこの40年で飛躍的に進歩しました。
現在は、正しい治療を行っているという前提であれば、上顎も下顎もかなり高い確率での成功率を誇っています。
正しい治療における条件とは、既に紹介したアルブレクソン教授の指摘した6項目です。
・生体材料として適切なこと
・デザイン(インプラント体の形態)が適切であること
・サーフェス・コンディション(インプラント体の表面)が適切であること
・適切な症例の選択
・サージカルテクニック(外科的技術力)
・インプラント体に加わる咬合
インプラントに向く患者・向かない患者2
歩かなくなり、電気信号による刺激が大腿骨に伝わらなくなると、リモデリングのレベルが下がってくるので、骨が弱くなります。使わなければ筋肉も弱くなり、ついには歩けなくなります。
インプラントを埋入する場合は、歯の骨がしっかりとあることが理想です。骨が全部しっかり残っていて、しかも歯がまったくないという人は、インプラント治療がしやすいです。その際、歯以外はどこにもトラブルがなく健康であるというのも条件になります。
しかしそういう、歯科医にとって都合のいい患者は、それほど多くありません。
すでに、骨の吸収が始まっていたり、高血圧、糖尿病といった生活習慣病だったりと様々な条件を持ちながら治療をするというのが大半です。
また、骨の質によっても条件が違ってきます。
骨は表面の硬い皮質骨と、真ん中の柔らかい海綿骨からできています。海綿骨があまりにも柔らかすぎることで、骨粗鬆症のようになっているケースもあります。あるいは、表面の硬い皮質骨が非常に薄くなっているという場合もあります。これらの場合、骨にインプラント体を埋入しても初期固定が難しく、オッセオ・インテグレーションが獲得できないこともあります。
インプラントに向く患者・向かない患者1
歯が失われた時点から体内への骨の吸収は始まります。入れ歯を入れても、入れないで抜けたままにしておいても、骨が吸収されます。
歯があるときには噛む力がかかり骨に刺激が伝わるので、骨のリモデリングのサイクルが機能します。骨は刺激がかかることで破骨細胞と骨芽細胞が活発に働いて、古い骨を壊し新しい骨を作り上げていきます。このサイクルを2年かけて行ない、骨を新しくします。
ところが歯を失い骨にかかる刺激がなくなってしまうと、リモデリングのサイクル機能が落ちていき、やがて骨は新しく生まれ変わることもなくなり、吸収されていきます。
たとえば、人間は歩かなくなると足が弱ってくるのと同じです。
これは、立って歩くときに重力がかかり、この際、骨の中を電気信号が流れます。これにより、大腿骨の中で骨のリモデリングのスイッチが入ります。歩くことで、大腿骨の古い骨が壊され、新しい骨が作られるので、骨は2年で新しいものに変わっていくことができます。これがうまく機能している限り、2年前の古い骨は身体にはまったくないということになります。
精度の高いオッセオ・インテグレーションの条件4
・適切な症例の選択
適切な症例の選択については、全身的に健康で骨がしっかりしていたほうがいいに越したことはありません。
骨が柔らかい、骨粗鬆症である、歯周病で骨がほとんど吸収されているという条件の悪い患者さんでは、オッセオ・インテグレーションの獲得が難しくなります。
・サージカルテクニック(外科的技術力)
サージカルテクニックの観点では、外科医としての技術力が低く、埋入したときにグラグラしているようでは骨にくっつきません。また、インプラント体を埋入するにあたり事前にドリルで穴を空ける際のヒート(熱)による骨のダメージによっても、オッセオ・インテグレーションの獲得が難しくなります。当然上部の歯も取り付けられないことになります。
・インプラント体に加わる咬合
インプラント体に加わる咬合は、歯がくっついたあとの?み合わせの問題です。?み合わせる歯がない場合は問題ありませんが、噛んだときに加重がかかると、それをうまく分散することができず、インプラントに過剰な荷重がかかってしまいます。そうなるとオッセオ・インテグレーションが壊れます。
これらをすべて満たすことができれば、オッセオ・インテグレーションが獲得できる上に、長期にわたって使えるということになります。
精度の高いオッセオ・インテグレーションの条件3
・サーフェス・コンディション(インプラント体の表面)が適切であること
機械で削ったものの場合は、本来の母骨からチタンに向かって骨ができていきます。ところが、表面を粗くするように特殊な加工をした場合は、埋入した段階ですぐに血液がついて、チタンの表面のほうから母骨に向かって骨ができます。同時に母骨のほうからチタンに向かって骨ができるために、オッセオ・インテグレーションが完成する期間が従来の半分になります。
治療時間を短くするという意味では、表面を粗く削りエッチング加工をしたインプラント体のほうが有利だろうといわれています。これはフッ素やフッ酸、硫酸などの酸性処理をすることで表面を粗く仕上げたものです。サンドブラスト処理というものもあり、これはアルミ化合物やチタン化合物を表面に吹き付けて加工してあります。
表面の粗さはどのくらいがいいかを検討しましたが、最初の頃に機械で磨いた粗さが一番いいという結果になりました。これには明確な根拠などありませんが、偶然にもそれが血一番よかったという結果だったそうです。しかし現在各社がデザインの変更に合わせて表面の粗さも買えているので、そのうち基準となる表面の粗さが変わるかもしれません。
精度の高いオッセオ・インテグレーションの条件3
・サーフェス・コンディション(インプラント体の表面)が適切であること
機械で削ったものの場合は、本来の母骨からチタンに向かって骨ができていきます。ところが、表面を粗くするように特殊な加工をした場合は、埋入した段階ですぐに血液がついて、チタンの表面のほうから母骨に向かって骨ができます。同時に母骨のほうからチタンに向かって骨ができるために、オッセオ・インテグレーションが完成する期間が従来の半分になります。
治療時間を短くするという意味では、表面を粗く削りエッチング加工をしたインプラント体のほうが有利だろうといわれています。これはフッ素やフッ酸、硫酸などの酸性処理をすることで表面を粗く仕上げたものです。サンドブラスト処理というものもあり、これはアルミ化合物やチタン化合物を表面に吹き付けて加工してあります。
表面の粗さはどのくらいがいいかを検討しましたが、最初の頃に機械で磨いた粗さが一番いいという結果になりました。これには明確な根拠などありませんが、偶然にもそれが血一番よかったという結果だったそうです。しかし現在各社がデザインの変更に合わせて表面の粗さも買えているので、そのうち基準となる表面の粗さが変わるかもしれません。
精度の高いオッセオ・インテグレーションの条件2
・生体材料として適切なこと
第一の生体材料として適切という項目については、チタンを使っていることに尽きます。今まで多くの素材を使っても、生体に密着することがなかった長い歴史を見ると、いかにチタンという金属の存在がすばらしいものかが理解できるでしょう。
現在は、純チタン製、チタン・プラズマコーティング、チタン・ハイドロオキシアパタイト・コーティングなどが製造されています。
・デザイン(インプラント体の形態)が適切であること
2番目のデザインというのは、インプラント体の形です。現在口腔インプラント体として主流になっているのは、ねじ山がついているスクリュータイプのものです。ねじ山の深さや形によって生体に馴染みやすいものとそうでもないものがあります。他にも、中心が空洞になっているシリンダータイプもあります。
・サーフェス・コンディション(インプラント体の表面)が適切であること
3番目のサーフェス・コンディションというのは、スクリュー表面の目の粗さのことです。顕微鏡レベルでみると、目が粗いものと表面が滑らかなものがあります。目が粗いものほど、骨にくっつきやすいのですが、汚染や感染症を起こしやすいという弱点もあります。表面が滑らかすぎると今度は骨のくっつきが多少落ちます。
精度の高いオッセオ・インテグレーションの条件1
チタンを利用した口腔インプラントの本体は、ブローネマルク博士が開発したねじ型が現在でも主流です。
下の部分にスレッドという切れ込みがあるねじのタイプで、メーカーによって、それに改良を重ねたものなど多くのタイプが発売されています。イタリアでは約160種類余りが販売され、日本でも40種類以上のインプラントシステムが使われています。
これらはそれぞれの会社で特許を取得しているので、口腔インプラントの治療費が高いのはこうした特許料がかかっているからです。
ところで、インプラントについては、オッセオ・インテグレーションが長期的にうまくいくためには条件があります。
これは1982年にスウェーデンのアルブレクソン教授によって提唱され、現在でもインプラント治療の基本となっています。
・生体材料として適切なこと
・デザイン(インプラント体の形態)が適切であること
・サーフェス・コンディション(インプラント体の表面)が適切であること
・適切な症例の選択
・サージカルテクニック(外科的技術力)
・インプラント体に加わる咬合
以上6つが的確であることを、長期にわたるオッセオ・インテグレーションの条件として挙げています。
世界初の人間向けインプラント4
アメリカのザーブ教授は、全米の歯科大学の学長及び学部長クラスに2名ずつ出席してもらうように要請し、トロント大学で実施されていたインプラント治療のデータとアデル教授の論文を比較して、成績に差がないことを訴えました。これには参加していた学者や歯科医師が驚き、この結果、全米でインプラント治療がスタートしたのです。
日本では、1985年に当時の厚生省が承認し、実際には88年からスタートしています。
インプラント治療に関しては、5年ごとにスウェーデンのイエテボリ大学で世界的な学会が開催されています。2000年に行われた35周年にはほぼ完璧に近いところまで技術が到達したことが実証される発表がなされました。治療法の開発や、オッセオ・インテグレーションにおける学問体系の完成を示す研究レベルの高さなどが報告され、現在更なる臨床応用の開発や学問体系の拡大が進んでいます。
また、現在、口腔インプラントのみならず、体中の骨の治療にチタンが使われるようになっています。
たとえば、足を失った人には、チタン製の大腿骨を作り、義足の代わりとして使われるようになっています。耳を失った人には、耳の周りの骨にインプラントを埋入して皮膚を貫通させる装置を置いて耳を取り付ける技術も実践で使われているのです。