インプラントってどんな治療なの?怖くないの?5

インプラント治療がうまくいかないと誤解されている場合も多いと思います。現在はうまくいかないケースの方がはるかに少なくなっています。
確かにインプラントが歯科臨床に応用され始めた当時は、ブレード(プレート)タイプのインプラントや骨膜下インプラントが主流であり、実践的な情報も少なかったために成功率は高いとはいえませんでした。

しかし、現在のチタンベースの歯根型(ルートフォーム)インプラントが主流になってからは10年以上経過の長期症例で90%以上の成功率を誇っています。これはクラウン・ブリッジ、入れ歯など従来の歯冠修復治療と比べても優れているのです。

チタンという金属は生体内での安定性がとても高く、骨との正着状態はオッセオインテグレーション(骨統合)と定義されて高い評価を得ています。このオッセオインテグレーションという概念が近代インプラントの歴史を塗り替えたといっても過言ではありません。

このことからチタン製の歯根型(ルートフォーム)インプラントは「オッセオインテグレーション・インプラント」とも呼ばれます。
オッセオインテグレーション・インプラントの原型となるシステムは1965年にスウェーデンで最初に歯科治療に応用されました。
この患者さんは現在も健在で、インプラントもまったく問題なく機能しています。これはある意味、天然歯の寿命にも迫る勢いなのです。

その後のオッセオインテグレーション・インプラントは、さらに改良されて生体内安定性や維持力、美しさも数段高まっています。

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インプラントと骨が結合する期間は、各インプラントシステムや患者さんの状態(インプラントを植えた部分の骨の状態、全身的な健康状態、喫煙の有無など)、手術の規模などによって差があります。

平均的には下顎で3ヶ月、上顎で6ヶ月程度といわれていましたが、最近はインプラントシステムの改良もあり、もう少し、早くなっているようです。

ただし、インプラントを植え込むまでにその他の部分に治療が必要(歯周病や虫歯など)であったり、多数の歯が欠損していて、噛み合わせの調整や発音・外観の形態などを確認する必要がある場合など、処置が増える場合は当然治療期間も長くなります。

また最近は、植立したインプラントに対してすぐに荷重(ものが噛めるようにする)を加える即時荷重の考え方も生まれてきましたが、対象となる症例は下顎の前歯部に限定されていて、インプラントに取り付ける人工歯も入れ歯タイプのものが主流です。
この方法も患者さんの顎骨の状態などでできない場合もありますので、担当の先生とよく相談されるとよいでしょう。

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歯根型インプラントの植立手術の術式はシステム化されているので、安心できる手術です。

一般的には、まず植え込むインプラントの直径に合わせた形成器具でインプラントを植えるホールを歯槽骨に形成します。そこにインプラントを無菌状態で植え込み、植え込んだ部分の粘膜を各々のインプラントシステムが推奨する方法で縫合して植え込み手術は終了です。
その後、インプラント周知の骨がインプラントと結合するのを待って、インプラントの上に支台装置を取り付けてクラウンなどの上部構造を製作・装着して完成です。

症例によっては噛み合わせを調整するためや、審美的な形態を確認するためなどで、仮の歯で経過をみることもありますが、大きな流れは前述の通りです。最近は、この歯根型インプラントが主流となっています。

お口の衛生状態や顎骨の構造などに特に問題がなければ、インプラントの植え込み手術(植立あるいは埋入手術)から上部構造体がセットされるまでが一般的には3ヶ月~半年くらいです。
それでは上部構造体がセットされるまでの3ヶ月~半年くらいは歯が無い状態なのかという心配があると思います。その心配については、外観だけは歯があるように見せるための一時的な歯を作ることもできます。

ただ、あくまでも外観重視なので、一時的な歯でものを強く噛んだりするのは控えていただくことになります。

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現在臨床で応用されているインプラントには、歯根型インプラントの他に、ブレードタイプと呼ばれる板状のインプラントと、骨膜下インプラントと呼ばれる馬の鞍状のインプラントを歯槽骨の上に直接乗せる方法などがあります。

ブレードタイプインプラントの場合は、その板状の形態から薄い歯槽骨などに適しているのですが、インプラントを植える溝を歯槽骨に形成する手技が比較的複雑であるため、熟練した歯科医でないと溝の形成にブレが生じやすく、インプラントを植えた直後の固定安定が悪くなり、インプラントと骨が理想的に結合しないケースもあるのです。

骨膜下インプラントは、インプラント自体を個別に制作するため、一度口の中の粘膜を剥離して顎骨の型をとる必要があります。
そしてインプラントが製作できたら再度粘膜を剥離して顎骨の上にインプラントを乗せて、粘膜でインプラントを覆うわけです。手術も大がかりになりますし、型取りがうまくいかなければインプラントがまったく合わないという結果にもなりかねません。よほど熟練した歯科医でないと成功率は低いようです。

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インプラントとは、大きな意味では生体内に植え込む人工物を指します。歯科の領域では歯科インプラントとか口腔インプラントと呼ばれます。
歯が抜けた部分の歯槽骨(歯を支えている骨)に人工の歯根を植えて、その歯根の上に人工の歯冠を制作して、なくなった歯が存在していた頃の環境を再現するという治療法です。

歯科インプラントは、長い歴史の中で様々なタイプが開発されてきました。
そして現在はチタンという安定した金属を母材にした歯根型(棒状あるいは砲弾状の形態にスクリューなどが形成されているタイプ)がすばらしい成功率を発揮しています。
これによりインプラント治療は歯科の重要な治療の一つとして世界の歯科医から認められています。

この歯冠型インプラントは、母材であるチタン表面の生体内安定性を高めるためにミクロの凹凸を付けたものや、生体材料であるセラミック系素材(ハイドロキシアパタイト)で被覆したものなど様々なタイプが臨床に登場しています。
ほとんどのタイプは完成度が高いシステムになっていますので、患者さんの歯槽骨や顎の骨の状態、かみ合わせの環境などによって使い分けられています。

人工歯の素材にはセラミックとハイブリッドセラミックがあります

かぶせ物(上部構造)はハイブリッドセラミックと通常のセラミック製のものがあります。セラミックとハイブリッドセラミックには、それぞれ一長一短があります。

セラミックはご存知かもしれませんが、陶器のような素材です。
石のようにかたく、物性は安定しています。
歯垢もつきにくく、ついてもとれやすい特長があります。
まったく変色もしません。

しかし強度はある反面、まれに堅いものを噛んだときの衝撃で割れて欠けてしまうことがあります。一概にはいいづらいところではありますが、欠ける可能性は3%くらいと試算しています。

ハイブリッドセラミックは、プラスチックが混入しています。
だからハイブリッド、というわけです。
セラミックと違って、欠ける心配は少ないです。しかしちょっとずつすり減る傾向があります。また若干ですが、吸水性があるため、タバコのヤニなどがつきやすいですし、コーヒーやお茶などの色素が沈着しやすい弱点があります。

一般的には前歯には審美性の高いセラミックを使うことが多く、ハイブリッドセラミックはコストを抑えるためにあまり人目に触れない奥歯に使うことが多いです。

インプラントは、医療費控除の対象にはなりますので、還付金を含めて、費用についての説明は、歯科医からきちんと聞くようにしてください。

インプラントの費用の内訳と適正価格の実際は?

インプラントの適正価格はいくらなのでしょうか。一般的な目安を言えば、一本あたりの費用は約30~40万円だと言われています。

もちろん患者さんの状態によって治療法にも差が出ますから、一概にこの費用ならば妥当とは言い切れません。

しかし、平均的な場合、このくらいはかかるはずだと思います。
費用の内訳を見てみましょう。明細としては大きく4つに分かれます。

1. 手術代
2. インプラント本体の費用
3. 土台の材料費、加工費
4. かぶせ物(上部構造)の材料費、加工費

インプラント本体(フィクスチャー)は、日進月歩でいろいろなグレードがあります。例えばスウェーデン製の品質のよいものであれば、1本20万以上します。

土台は単純そうにみえて2万円程。かぶせ物はそれ程高額ではありませんが、
セラミック製であれば1本7万円ぐらいになります。インプラント本体と土台とかぶせ物は、本数に比例して費用は加算されていきます。

また同じ3本のインプラントでも、ブリッジタイプにするか、単独タイプにするかで、数十万の違いが出てきます。もちろん安いほうがいいという話ではなく、ブリッジタイプですむ場合と単独タイプにしなければならない場合があります。

あまりにも安いインプラントには罠があるかもしれません

インプラント治療をするにあたって費用は大事なポイントです。
不安や怖さを抱える多くの患者さんにとっても切実な問題だと思います。
これから、費用の不安を解消するための記事を書きたいと思います。

インターネットで「インプラント、1本○万円」なんて広告を見かけることがあります。
「なぜそんな安い金額でできるの?」「一体どんな治療を行っているの?」と疑問が次々と浮かんできませんか?

それと同時に「そんな低価格の治療を受けて、大丈夫なのかな?」と不安に思う気持ちもわいてくるかもしれません。
決して安いこと自体を否定しているのではありません。安くてよい治療が患者さんに施せたら、それに越したことはありません。インプラント治療の普及にもつながり、大変いいことだと思います。

インプラント本体そのものの値段もですが、リスクを減らすための事前の処置や検査にもそれなりの費用がかかります。
品質の高い材料を使用し、適切な手術を受けるとなれば、最低ラインの価格があるのは仕方がないことなのです。

それだけに、最低ラインの価格を大きく削った宣伝を見ると、どこかに安さのカラクリをつくる手抜き的な要素が潜んでいるのではないか、ついそのように疑ってしまいます。

CT撮影の被ばく量

インプラントは、非常にすぐれた治療法です。
失われた歯がもう一度よみがえり、まるで自分の歯のように、食べ物を美味しく噛めるようになるからです。まさしく第2の永久歯が生えてきた感覚で、生き生きとした毎日を送れるようになります。あなたのライフスタイルまでも劇的に変えるほどのすばらしい治療法なのです。

だからこそ多くの歯科医、この治療法に注目しているのです。
そのインプラント治療に欠かせないのがCT撮影です。

CT撮影と聞くと、CT撮影の被ばく量はどうなのかと、疑問を呈する方もいるのではないでしょうか。健康にどのような影響を及ぼすのか、心配される方も実際にいますので、お教えしましょう。

参考までに申し上げれば、歯科医院でのCT撮影の被ばく量は、およそ胸のレントゲンを撮影するのと変わりありません。大変少ないレベルです。

ピンとこない人もいると思いますが、この被ばく量は、東京・ニューヨーク間を飛行機で往復した際に、自然に受ける放射線量と同じです。

アメリカへの海外旅行1回分にすぎません。
普通の総合病院で、同じアゴの部位のCT撮影をすると、被ばく量は20倍になります。歯科用CTは非常に被ばく量が少ないのです。
被ばく量についての心配は、ほとんどありません。

アゴの内部の血管や神経を傷つけないためのCT撮影

インプラント治療はどんな歯科医でも簡単にでき、これっぽっちの危険もない夢の治療法だというつもりは全くありません。しかるべき技術や知識、
治療設備が備わってこそ、安全であり安心であることを、皆さんにわかっていただきたいと思います。

安全な治療を実現するためには、設備の充実が欠かせません。
重要視すべき設備とは、何を置いてもCT撮影のためのCTスキャナー(X線コンピュータ断層撮影装置)です。

例えば、ヒトの下アゴの内部には、下顎管(かがくかん)と呼ばれる管が通っています。

アゴの両サイドに左右対称に通っているこの管の中には神経や動脈や静脈が通っています。この管を万一誤って傷つけたらどうなるか。
マヒを残してしまったり、大出血をしたりします。
歯科医は、この管を傷つけないように慎重に手術を行います。

この下顎管を確実に避けるための方法は1つ。CT撮影で患者さんのアゴを撮影し、その位置を確認するしか方法はありません。

むろん歯科医もプロですから、CT撮影をしなくても下顎管の位置は、おおよそ見当がつきます。ただそれですと、インプラントを埋め込む際、下顎管を傷つけないよう気をつけるあまり、安全策をとって浅くしか埋め込めなくなります。

CT撮影で下顎管の位置をしっかり認識できれば、下顎管を避けつつ、インプラントを最適最良の位置と深さで埋め込むことができるというわけです。