骨の研究から発見されたチタンの特性2

チタンが発見されてから200年以上経っているのに、なかなか利用が進まなかったのは、精製技術が確立されるのに時間がかかったのと、加工技術が難しかったからです。
戦後それらの技術が確立されたことにより、利用範囲が驚異的に広がっています。

多くの特性を利用して、アルミ、銅、鉄、マンガンなどと合金を作って、戦闘機やロケットの本体、あるいはミサイルなどにも利用されています。

つまり、軽くて丈夫なのに、変化しにくいのがチタンなのです。ですから、チタンのメガネフレームは軽いし、汗などにも強い。しかも、身体との相性がいいのです。

たとえば二酸化チタンは皮膚を保護する働きをすることから、日焼け止めに使われています。このように生体と馴染みやすい親和性があるのもチタンの面白い特性といえます。

こうした様々な機能があるチタンが、人工歯根や人工関節、はては人工の耳、頭蓋骨の代替品としてまで広く使われるようになったのは、ある研究者の実験がきっかけです。

1952年にスウェーデンのイエテボリ大学の整形外科医で解剖学者であるブローネマルク博士が、骨髄の機能について研究をスタートさせました。この実験で起こったある偶然が、現在の生体向けのインプラント利用の礎になっていったのです。

骨の研究から発見されたチタンの特性1

インプラントに使用されるチタンは、ゴルフのチタンドライバーやメガネのフレームなど身近なところで使われているおなじみの金属です。

元素番号は22で、元素記号はTi。
地球の地殻の成分としては9番目で、それほど希少という金属ではりありませんが、金紅石などの中に混入していることが多く、単体の金属として発見されるまでには時間がかかりました。

最初はイギリスで1791年に発見されました。ですが、当時は新しい金属だという理解がありませんでした。その後、1795年にドイツ人のマーチン・ハインリヒ・クラブロートとう人が、金紅石の中からチタンを発見し、ギリシャ神話の地球上の最初の子供である「タイタン」にちなんで、チタンと名づけたのです。

チタンは、地表だけでなく、アポロが採取してきた月の石のなかにも、時折降ってくる隕石の中にも含まれています。石炭の中にも確認されているだけでなく、植物にも人体にもごくわずかですが含まれています。

チタンはプラチナとほぼ同等の強い耐食性があり、常温常圧では酸にも塩分にもほとんど反応しないのでサビがつきません。鋼鉄と同じ強さがあるのに、鋼鉄の45%の重さしかありません。軽い金属として知られるアルミニウムと比べても、60%の重さで強度は2倍あり、しかも金属疲労しにくいのです。

インプラントにしたら、肩こりがひどくなった

適合の悪い補綴物は違和感を生みます。また、噛み合わせが悪いと、姿勢がゆがみ、体調不良を招きます。
いい治療はまったく違和感がなく、自然な感覚です。補綴物を入れたあとに違和感が生じたり、顎関節の音がする、肩がこる、首筋が張るなどの症状が出てきた場合、治療に何か問題がったとしか考えられません。

補綴物には、左右で高さが違っているとか、歯並びの不揃いなどがないことも大切です。これらが合っていないと、骨が溶け、治療の成果が長持ちしないだけでなく、顔が曲がり、姿勢が悪くなります。その結果、治療の前後で顎関節の音がするようになったり、肩こりや首筋が張るなどの症状が出るようになります。

さらに注意しなければならないのは、一見、補綴物がきれいに並んでいるようでも、咬合紙(咬み合わせをチェックする赤や青の紙)を咬んだとき、適切な場所に印がつかないと、うまく咬み合っていないということで同じ結果になることです。補綴物は、ある一定の法則性をもって、理想的な位置で、厳密に均等な圧力で咬み合っていなければなりません。

理想的な適合、咬み合わせになると、「生まれてからいちばんいい咬み心地」と患者さんが口をそろえて言うほど違和感がなく、快適なものなのです。

インプラントメーカーについて3

インプラントが細くて短い場合、骨と接する部分の表面積が少なく、咬む力によって骨に加わる単位面積あたりの力が大きくなりすぎます。
平底の靴で踏まれるより、ハイヒールの踵(かかと)で足を踏まれたほうが圧力が大きく、痛いのと同じです。

これによって、微少骨折を起こしかけた骨が悲鳴をあげ、痛みが生じるのです。とくに、非常に大きな力が加わる奥歯の部位には、細くて短いインプラントを使うべきではありません。

また、インプラントは、すべての患者さんが同じように骨につくわけではありません。骨密度の低い方や血圧の低いやせ型の方は、インプラントに接する骨が少なく、細くて短いインプラントを埋め込んだのと同じ状況になります。このような方は太さのある長いインプラントを使用すると痛みを防ぐことができます。

通常、インプラントは骨の幅や高さに合わせて、可能な限り太く長いものを選択するのが理想です。ただ、そのためには、手術のときにすぐ使えるように多くのサイズを在庫しておかなければならず、コストがかかります。

そこで、幅の細い骨や、高さのない骨の部位など、どこにでも埋め込める細く短いインプラントを、一つのサイズだけ多量に購入してコストを抑えるということが行われているようです。これが、細く短いインプラントがよく使われる原因です。

インプラントメーカーについて2

優秀な技術者がいるメーカーであれば、一流メーカーと同等か、それ以上の製品をつくることは可能です。実際に、ある信頼できるインプラントメーカーの製品を顕微鏡写真で確認すると、その精度は相当だそうです。

また、一流メーカーの製品でも、発売後に2、3年しかたっていないものもあります。そうなると、予後についてはほとんどわかりません。20~30年後の予後を推測するという意味では、精度管理がきちんと行われ、破折しにくい金属強度、腫れにくい歯肉との相性などの基本的性質を考慮しているメーカーであれば、ほぼ同じと言えます。

正しく治療されたインプラントは、ものを咬むと痛いということはありません。痛い場合は、何か問題があるのです。インプラント部分が腫れたり、膿が出たりしている場合は痛みます。また、インプラントが動揺し、骨についていない場合も、当然、痛みが出ます。
ところが、レントゲン写真を見ても問題がなく、腫れや動揺もないのに痛いという場合があります。それは、細くて短いインプラントが使われているからです。

骨は、力が加わらないと骨密度が下がり、最適な力が加わると吸収と再生の適度な新陳代謝がくりかえされ、強くなります。逆に、力が加わりすぎると、骨の吸収や微少な骨折が生じることがあります。

100%成功するという医者は信用できない

どんなに技術にすぐれた歯科医でも、100パーセント成功するということはありません。まだ診てもいない患者さんの、「治る力(自然治癒力)」がわからないのに、「100パーセント成功する」などと言いきれるものではありません。

ただ、インプラント治療に目をやると、すべて治せるような錯覚に陥ることがあります。治療結果が直接目に見えて、治ったことがわかりやすい歯科の特徴から生じるのです。

多くの歯科医にはよく、何でも治せると思う時期、また、問題にぶつかって「ほんとうに治療すべきなのか」と思う時期、そして、問題も含めて着実に自信を得る時期があるようです。つまり、「100パーセント」「一生」という言葉を使うのは本当に難しい事だということです。

一例をあげると、インプラントは金属材料で、かなり強度のあるインプラントを使わないと金属疲労で破折することがあります。やはり、絶対大丈夫などということは無いという事です。

インターネットなどで「一生保証」を謳っていた歯科医も、保証をとりやめたところもあるようです。一生保証など、無理な話なので注意が必要です。

インプラントのメーカーについて

いま、国内では数十種類のインプラントが販売されていますが、やはり「一流メーカー」という言葉に弱いのか、そういう企業のインプラントは値段が高くても売れているようです。

しかも、形状が新しくなるたびに価格を上げてくるので、数年前の倍近くになっていたりします。「コストがかかるぶんは、患者さんに負担してもらえばいい」という発想のようですが、これでは、いつまでたってもインプラント治療は高嶺の花のままです。

さらに問題なのは、何か不具合があってやり直すことになった場合、高額なインプラント代を歯科医が負担できればいいのですが、もしできないとすれば、やり直しを躊躇するケースが残念ながら出てくることです。

不具合を訴える患者さんのなかには、インプラント治療に明らかな問題があり、担当医に「調子が悪い」と訴えても、「問題ありません」というような押し問答をくりかえしている例が実際にあるようです。

インプラント治療では噛み合わせの調節が非常に重要なのですが、時間も手間もかかるため、メーカーが主催する講演会などでは、「噛み合わせは磨り減って合わなくなるが、気にしなくていい」というような考え方が主流を占めているようです。

当院では治療後のアフターケアも含めて責任を持って対応ができるように努めております。

インプラントが骨についてもすぐに歯を入れてはいけない

インプラントはチタン製の装置で、歯根に近い形をしています。
数ある金属のなかで、チタンはほぼ100パーセント、骨の細胞が異物反応を示すことなく近寄ってきて、骨につきます。インプラントの手術後、上顎で3ヶ月、下顎で2ヶ月すれば骨につきます。その後は、インプラントを歯根のかわりにして、自分の歯のように噛める人工歯(補綴物)を取り付けます。

ただ、インプラントが骨についたら、すぐに型取りをして補綴物をつけてもいいのかというと、答えは「ノー」です。
たった一本の補綴物が顎の位置をずらし、体調を狂わせる場合もあります。

たとえば、噛み合わせを調節する場合、顎がずれないように、歯ぎしりや上下に噛んだときの歯と歯の接触の圧力をミクロン単位で調節しなければなりません。
そのためには、補綴物にその情報が組み込まれている必要があります。

単に補綴物を削って、歯と歯が均等に当たるようにするというような、単純な調整ですむ話ではありません。
少し調整するたびに変わる顎の位置や姿勢を観察し、評価しながら合わせていかなければならないのです。

とくに、歯を何本も治療する場合は、顎の位置が大きくずれることがあります。そのため、インプラントが骨についたら、まず樹脂製の仮歯をつけて、噛み合わせや姿勢、体調が改善することを確認し、その顎の位置を正確に再現しながら補綴物を入れるべきです。

インプラント治療は天然の歯がよみがえったように感じるってホントなの?2

歯科で従来から行われていた治療は、虫歯の部分を削除したり、ブリッジにするために健康な歯を削ったり、ダメになった歯を抜いたりと、生体組織を取り除く治療でした。
しかしインプラントは唯一与える治療に転換したのです。

現在、歯科医師会を中心に展開されている「8020運動」は80歳で20本の歯を残そうというものです(健康なお口の中は28本の歯が存在します)。
これは従来型の取り除く治療がベースになっていることから、可能な限り残そうという考え方になります。
この運動に人工歯根(インプラント)が加わり、人工とはいえどもインプラントを一本の歯と考えると、「8020運動」も成り立つのです。
これにより患者さんの表情に笑顔があふれ、おいしいものが食べられ、元気に社会生活が営めたら、これ以上の幸せはないのではないかと感じています。

インプラントは人工の歯根と歯のセットなので虫歯にはなりません。
しかし、不潔にしていると歯周病のような状態(これを「インプラント周囲炎」といいます)にはなりますので、お手入れは天然の歯と同様あるいはそれ以上と考えるのが大切です。

インプラント周囲炎も歯周炎も、同じ様な細菌が原因になっているといわれています。ですから、噛み合わせの調整も含めて定期的な管理指導を守っていくことがとても大切です。

インプラント治療は天然の歯がよみがえったように感じるってホントなの?1

インプラントを植立した患者さんの感想は、天然歯が蘇ったような感じがするというものが圧倒的に多いです。
特に入れ歯を装着していた患者さんは、取り外しの煩わしさやがたつきなどの不具合から解放されます。

また、入れ歯を装着していると知人・友人と会食をする場合や泊まりがけの旅行に行く場合に、入れ歯の手入れがあるためにつき合いに躊躇するという悩みもあるのですが、インプラントでは天然歯に対するケアに準じたお手入れで済むため、まったく自然に振る舞えるということです。

また、歯周病で歯を無くした患者さんなどは、残っている天然歯にも歯周病が進行して歯グキのサポートが弱いため、インプラントの方がよく噛めるという意見もよく聞きます。

これらの感想や意見は、歯を失ってはじめて実感するものなのです。
それだけにすべての歯が健康に残っているということは、とても幸せなことだということを再認識することが重要です。
そして不幸にも歯を失ってしまった場合に、最も自然な治療法であるインプラントで治療を行うということは、決して贅沢なことではありません。