インプラントとは人工の歯根⑤

●周辺の歯に負担をかけず、単独で入れられる
たとえば、歯を1本抜いてブリッジにするとします。ブリッジにするには、抜いた歯の両サイドの歯もけずらなければなりません。そのために歯全体の寿命が短くなってしまいます。それよりは、1本だけ単独でインプラントを入れるほうが、ほかの歯のためにもよいのはいうまでもありません。

インプラント治療なら、周辺の歯に負担をかけることなく、単独で入れることができますので、歯が1~2本抜けたときは、ブリッジよりもインプラントをおすすめします。
総入れ歯を入れると、あまり硬いものは噛めなくなります。人間の歯はもともと骨にしっかり植えられているものですから、その人の体重くらいの重さで噛むことができます。しかし総入れ歯はそのようにはいきません。

総入れ歯はプラスチックで支えられています。加えて、口のなかは動きますし、はずれることもありますから、天然の歯の何分の一の力でしか噛むことができないのです。
一生、自分の歯で硬いものでもバリバリ食べられるのが、万人の理想であるのはいうまでもありません。

インプラントとは人工の歯根④

●年齢にかかわりなく高齢者でもできる
高齢者ほど定着率が悪いので、インプラント治療は行わないという歯科医もおられるようですが、健康な方であれば、年齢にかかわりなくできます。

●抜歯のあとなら切開しないで入れられる
インプラント治療は、抜いた歯のところに人工の歯を埋め込むのですから、考え方としては抜歯とは逆の作業をするわけです。抜歯のあとにインプラント治療をすれば、わざわざ切開する必要がありません。

歯を抜くときは麻酔をします。歯を抜いてしばらくはまだ穴があいていますから、インプラントを入れるにしても大きな切開や、骨をドリルでけずる必要がありません。麻酔をして少し穴をあけ、人工歯根を入れ、縫って終わりです。普通の歯を抜いたのと同じぐらいで、薬を3~4日くらい飲めば問題ありません。

インプラントとは人工の歯根③

●材料がチタンだから長持ちする
インプラントの材質として、かつてはセラミックを使っていました。これはくっつきはよいのですが折れやすかったのです。チタンを用いるようになってから落ち着き、10年以上もつものがかなり出てきました。
インプラントのチタンは、股関節脱臼の治療に使う人工股関節と同じものです。人工股関節はだいたい10年以上もちますが、インプラントも上手に行えば10年以上もちます。

●トータル治療期間は約100日(下顎の場合)
下顎の場合、インプラントの手術をしてから3ヶ月ぐらい経って問題が発生しなければその時点で安心できます。人間のもつ防御反応で、入れたインプラントの周囲に膜ができます。それは袋のようになっており、細菌の侵入を防いでくれます。

こうなってから、歯根部に支台部を取り付けて、上部の歯をかぶせるといった段取りになります、治療を始めてから、インプラントが骨に定着して自然の歯と同じようになるまで、つまり治療が終了するまで、下顎の場合トータルで100日程度かかります。

埋め込んだ歯根部と骨には、だいたい100ミクロンぐらいのすき間があるといわれており
1日1ミクロンずつ歯根部が骨に定着していきますから、100日ぐらいで固まるのが一般的です。上顎の場合はその倍の日数が必要で、6ヶ月ぐらいです。

インプラントとは人工の歯根②

インプラントの構造は、自然の歯にかなり近いもので、歯根部(顎の骨のなかに埋め込む部分)、上部構造(歯の部分に相当する部分)、支合部(歯根部と上部構造を連結する部分)の3つの部分から構成されています。
なぜ、インプラントは安全・確実な治療法なのでしょうか。その理由はつぎの通りです。

●神経や血管を痛めない安定した治療
インプラントを入れるためには、歯肉を切開しなければなりません。かつては平面的なレントゲンで手術をしていましたから、立体的に患部を診ることができませんでした。そのため手術のデザインが難しく、手術に取り組めませんでした。

ですが立体的に診断できるレントゲンを導入すれば、問題なくできるようになります。立体的に診断できれば、手術の方向性を確実に決定づけることができ、神経や血管を痛めることもありません。だから安定した治療を行うことができます。
歯根部を入れるとき、神経と血管を避けるために、横からのレントゲンと縦の輪切りのレントゲンを撮り、位置と確度を測定しながら行います。このレントゲンが成功率アップに貢献しています。

上顎は骨が密ではなく細くてやわらかいので、下のインプラントよりも難しいといえます。骨は下の方が丈夫ですから、下の成功率のほうが高くなります。

インプラントとは人工の歯根①

インプラントとは人工の歯根です。歯肉を切開してあごの骨に人工的な歯根部を埋め込んで、歯肉でおおうように縫合し、その上に人工歯を取り付ける最新の治療方法です。
入れ歯のようなわずらわしい取り外しも不要ですし、見た目もきれいで、使い心地も入れ歯のような違和感がないのが特長です。また、ブリッジのように、健全な両側の歯をけずって、周囲の歯に負担をかけて弱めるような心配もありません。

インプラントを入れたら、腫れて痛くてどうしようもないという話を耳にすることがありますが、それは疑いもなく失敗です。
歯科医は患者さんに対して、何年後、何十年後まで責任をもたなければなりません。とくにインプラントは、患者さんに金額的に負担を与える治療になります。それを考えるとたいへん責任を感じます。

インプラント治療をするには、歯科医にもかなりの勇気と自信が必要となります。
かつて、インプラント治療は、安定性に欠ける心配がありましたが、最近開発されているインプラントは、すでに世代が違ってきています。
かなり安定性、定着率が高くなっており、ふつうの歯科治療とほとんど変わらないくらいの成功率になりましたから、安心・確実な治療法だといえます。

アフターケアをおこなうかどうかでインプラントの寿命は変わります

ある程度高額なものならば、どんな商品でも大抵は購入者に対してアフターケアを行っているものです。売りっぱなしはいただけません。インプラント治療もしかりだと思います。しかし、残念ながら、手術が終わり治療費を受け取ったら、患者さんに急に冷淡になる、そんな歯科医がいないとも限りません。

インプラント治療は、きちんとアフターケアについて配慮している歯科医院を選ぶべきです。手術直後、患者さんは不安でいっぱいです。これから何に気をつければよいのか、わからないからです。歯科医院の責任として、手術後のケアについて詳しく患者さんに説明する義務があると思います。
インプラント手術が終わった方に対して、必ず丁寧に歯ブラシの仕方を説明することが大事です。

インプラントの10年後の残存率は95%です。残りの5%は、ほとんどが歯周病菌に冒されてインプラントがダメになるケースです。それだけに、歯周病にならないためのブラッシングはとても重要なのです。

さらにすべての方に定期検診(メンテナンス)にお越しいただいて、歯周病の検査や口の中のクリーニング(PMTC)を行うことをおすすめします。PMTCは歯周病予防に大変効果があり、メンテナンスを怠らなければ、インプラントは飛躍的に長持ちします。

気になる治療期間と通院の回数について

治療期間が一体どれくらいかかるのかも気になるところでしょう。

インプラント治療の方法によって多少の違いはありますが、一般的なインプラント治療の場合では、下あごで3ヶ月半、上あごで4ヶ月半くらいです。上顎洞を持ち上げるなど特殊な手術がともなう場合は、プラス1~6ヶ月かかるとお考えください。

このプラスにかかる期間中は、治療のための通院は必要ありません。インプラントと骨が結合するのを待つだけです。

通院回数についても、比較的多い質問です。これは1回法と2回法で異なります。
1回法、2回法というのは手術方法です。
1回法というのは主に簡単なケースでの手術方法で、インプラントの頭の部分を歯ぐきの上に出した状態で手術を終える方法です。

対して2回法は、前歯の場合やGBR法(骨を増やす手術法)、上顎洞を持ち上げる手術をした場合などに行う方法で、インプラント本体をいったん完全に歯ぐきの中に埋め込んでしまいます。そして、しっかり骨と結合したところで、インプラント本体の頭の部分を歯ぐきから露出するための手術を行います。よって手術は2回、そのため2回法というわけです。

1回法では「検査、手術、消毒、型とり、かぶせ物(上部構造)装着」の計6回程度の通院が必要になります。
2回法の場合は、さらに2次手術などが伴い、プラス1回の通院が増えて計7回程度になりますので、参考にしていただければと思います。

手術をした当日にしてよいこと、いけないこと

まず、手術した当日に食事をしてOKか。
答えはOKです。但し、インプラント手術をした部位の反対側で噛むことをおすすめします。

食べた後の歯磨きはどうすればよいか。1週間から10日くらいは、歯ブラシを使うのは控えたほうがよいでしょう。特に手術をした部位周辺はデリケートになっています。歯ブラシがあたると、傷口を縫い合わせている糸がほつれることがあります。傷口がくっつきにくくもなります。歯ブラシの代わりにうがい薬を患者さんに渡している場合もあります。食後と寝る前にうがいをすれば、歯磨きの代わりになります。

手術当日の入浴はどうでしょうか。これは、なるべくなら避けていただきたいと思います。
理由の1つは、口の中を感染させるリスクを回避してほしいからです。もう1つの理由は、長風呂や熱めの風呂は、血流を活発にします。すると痛みや出血を引き起こすおそれがあるのです。同じ理由で、飲酒も避けてください。

ビジネスマンにとっては、仕事ができるかどうかも気になるのではないでしょうか。手術当日はひどく疲れるような仕事は避けたほうがよいでしょう。けれども軽い仕事などは、特段問題ありません。

では、運動はどうでしょうか。これもすすめられません。激しい運動は血流を盛んにします。やはり痛みが出たり、出血の原因になりますから、避けてほしいと思います。

手術には一体どれくらいの時間がかかるのか

痛くないことを理解していただくと、次に患者さんが口にするのは、「手術は一体どれくらいの時間がかかるのか」という質問です。

インプラントを埋め込む本数にもよりますが、1~2本であれば、20分~40分以内に手術は終わります。この時間は純粋な手術時間ですが、手術前の投薬や血圧測定を加えたとしても、だいたい長くみて1時間~1時間半くらいです。埋め込む本数が多い場合でも、プラス30分もみていただければ大丈夫でしょう。しかしこの数字は、あくまでも標準的な手術時間です。目安にしていただくと良いかと思います。

ちなみに、「手術中、ずっと口を開けっ放しなの?」と心配されるかもしれません。1時間ずっと口を開けているのは確かに大変です。これも参考までですが、患者さんにはこまめに口を閉じてもらい、休憩していただくことも可能です。

たとえば麻酔が効く間や、器具の付け替えなどのタイミングで声を掛けて、口を閉じてもらうことができます。こういった細やかな配慮も良い歯科医院かどうかを見極めるポイントになるかもしれません。

インプラント治療の成否は歯科医院選びで決まってしまう⑧

【患者さんを思いやる、人間性を持った医師であること】
最後のポイントは、とても情緒的な部分ですが、この点もまた医院選びにおいて絶対に軽視できない点だと確信しています。

治療技術を持った医師であることを前提に申しますと、たとえどんなに治療技術に長けていても、患者さんに冷たい先生や、患者さんの気持ちを考えてくれない先生だったらイヤなものです。

本当に人間として信頼できる医師であるかどうかは、その医師との会話からわかると思います。
その先生に人間的魅力を感じたなら、治療を受けることを決心していいかと思います。そもそも、腕の良い本物の医師であればあるほど、人格においても素晴らしい場合が多いものです。