インプラントとは人工の歯根⑧

高齢者であっても、全身的疾患もなくお元気であれば、歯を抜く程度の手術には耐えられますから大丈夫です。ただし40歳代、50歳代でも、病気がちでいつも薬を飲んでいるような人は、無理をすべきではありません。

体力面をクリアしてインプラントを希望しても、骨が少ない方の場合には埋め込むべき場所がないので実施が難しくなります。骨の厚みと量が十分であれば、つまり、インプラントを植える土台がしっかりしていますから、問題なく治療ができます。

インプラントの成功確率を高めるには、レーザーや高性能のレントゲンなどを使うことがひとつの要因になっていると思います。これらの機器の手助けがあるからこそ、手術をしたあとでも問題が起こることもなく、歯根部を定着させることができます。

インプラントは、これからもっと広まってくるでしょう。そうなれば費用の面でも安くなると思います。現時点では費用がまだ少しかさみますし、実際に行っている歯科医も限られています。

インプラント治療の技術は、21世紀にはさらにレベルアップしていくでしょう。
たとえ歯がなくなっても、歯を自在に埋め込むことができれば、天然歯に近い状態で噛めるという実用的な恩恵はもちろんのこと、審美的にもそのよさは疑いのないところです。まさにインプラントは人類の夢なのです。

インプラントとは人工の歯根⑦

インプラントについて、定着率が悪いとか、痛みや腫れがひどいとかといった恐怖感をもっている方がおられるようですが、それはまったくの杞憂です。インプラントは1年もてば、10年ぐらいはもつというデータもありますし、手術が成功すれば痛みなどありません。定着しないのは、手術してだいたい1~2週間でわかります。その場合には炎症を止めてから、再度行えば大丈夫です。

では何本までインプラントを入れても大丈夫かということになります。なかには上手な先生がおられて10本以上を一度にという場合もありますが、まずは1本か2本ぐらいずつ手術していくのがよいと考えます。その結果として10本以上実施できるのであればすばらしいことです。

インプラントは、まず1本入れてみて適合したら増やしていくのが、いちばん無理のなり、賢い利用法でしょう。
1本の具合をみて、インプラントが可能な体質だとわかれば、先生と相談してすばらしい自分にあったプランをたてていくことを、おすすめします。
インプラントに対して、体質的に拒否反応を示す患者さんもなかにはおられます。ひどい金属アレルギーの方は少ないのですが、基本的に免疫力があるかないかによって決まるのではないかと推測します。

たとえば、ひどいリウマチの方、骨粗鬆症の方、糖尿病の方などは、手術が成功して全く痛みがなくても、きっちりと定着しないことがあるようです。このような患者さんには、インプラントを支える基礎体力がないように思われます。体に重篤な疾患のある人は、やはり実施が難しくなります。

インプラントとは人工の歯根⑥

不幸にも歯がなくなった場合の手段として、安定させる目的でインプラントを使うという方法があるのです。
二本のインプラントを埋め込み、それにちょうつがいのように留め金をつけます。そして内側に固定装置をつけた入れ歯と、パチンと留められるようにします。このように入れ歯を固定すれば、安定度がぐんと高まり、使い心地はまったく違ってきます。

かっちりと骨にくっついたインプラントの歯が生えて、そこに入れ歯を留めるのですから、いま考えられる総入れ歯のなかではベストだと思います。これなら自費で実施する価値がありますし、患者さんのほうも、生きたお金を使ったといえるでしょう。総入れ歯で噛めずに苦労を強いられている方なら、やってみても損はないでしょう。

しゃべったりするときに舌が押し出すので、下の入れ歯はとくにぴったり合うのが難しいものですが、下の入れ歯がガタガタになったとき、その入れ歯をちょっと留めてくれるインプラントがあれば、非常に噛みやすくなります。とくに、下の義歯を安定させるためにはおすすめします。

インプラントとは人工の歯根⑤

●周辺の歯に負担をかけず、単独で入れられる
たとえば、歯を1本抜いてブリッジにするとします。ブリッジにするには、抜いた歯の両サイドの歯もけずらなければなりません。そのために歯全体の寿命が短くなってしまいます。それよりは、1本だけ単独でインプラントを入れるほうが、ほかの歯のためにもよいのはいうまでもありません。

インプラント治療なら、周辺の歯に負担をかけることなく、単独で入れることができますので、歯が1~2本抜けたときは、ブリッジよりもインプラントをおすすめします。
総入れ歯を入れると、あまり硬いものは噛めなくなります。人間の歯はもともと骨にしっかり植えられているものですから、その人の体重くらいの重さで噛むことができます。しかし総入れ歯はそのようにはいきません。

総入れ歯はプラスチックで支えられています。加えて、口のなかは動きますし、はずれることもありますから、天然の歯の何分の一の力でしか噛むことができないのです。
一生、自分の歯で硬いものでもバリバリ食べられるのが、万人の理想であるのはいうまでもありません。

インプラントとは人工の歯根④

●年齢にかかわりなく高齢者でもできる
高齢者ほど定着率が悪いので、インプラント治療は行わないという歯科医もおられるようですが、健康な方であれば、年齢にかかわりなくできます。

●抜歯のあとなら切開しないで入れられる
インプラント治療は、抜いた歯のところに人工の歯を埋め込むのですから、考え方としては抜歯とは逆の作業をするわけです。抜歯のあとにインプラント治療をすれば、わざわざ切開する必要がありません。

歯を抜くときは麻酔をします。歯を抜いてしばらくはまだ穴があいていますから、インプラントを入れるにしても大きな切開や、骨をドリルでけずる必要がありません。麻酔をして少し穴をあけ、人工歯根を入れ、縫って終わりです。普通の歯を抜いたのと同じぐらいで、薬を3~4日くらい飲めば問題ありません。

インプラントとは人工の歯根③

●材料がチタンだから長持ちする
インプラントの材質として、かつてはセラミックを使っていました。これはくっつきはよいのですが折れやすかったのです。チタンを用いるようになってから落ち着き、10年以上もつものがかなり出てきました。
インプラントのチタンは、股関節脱臼の治療に使う人工股関節と同じものです。人工股関節はだいたい10年以上もちますが、インプラントも上手に行えば10年以上もちます。

●トータル治療期間は約100日(下顎の場合)
下顎の場合、インプラントの手術をしてから3ヶ月ぐらい経って問題が発生しなければその時点で安心できます。人間のもつ防御反応で、入れたインプラントの周囲に膜ができます。それは袋のようになっており、細菌の侵入を防いでくれます。

こうなってから、歯根部に支台部を取り付けて、上部の歯をかぶせるといった段取りになります、治療を始めてから、インプラントが骨に定着して自然の歯と同じようになるまで、つまり治療が終了するまで、下顎の場合トータルで100日程度かかります。

埋め込んだ歯根部と骨には、だいたい100ミクロンぐらいのすき間があるといわれており
1日1ミクロンずつ歯根部が骨に定着していきますから、100日ぐらいで固まるのが一般的です。上顎の場合はその倍の日数が必要で、6ヶ月ぐらいです。

インプラントとは人工の歯根②

インプラントの構造は、自然の歯にかなり近いもので、歯根部(顎の骨のなかに埋め込む部分)、上部構造(歯の部分に相当する部分)、支合部(歯根部と上部構造を連結する部分)の3つの部分から構成されています。
なぜ、インプラントは安全・確実な治療法なのでしょうか。その理由はつぎの通りです。

●神経や血管を痛めない安定した治療
インプラントを入れるためには、歯肉を切開しなければなりません。かつては平面的なレントゲンで手術をしていましたから、立体的に患部を診ることができませんでした。そのため手術のデザインが難しく、手術に取り組めませんでした。

ですが立体的に診断できるレントゲンを導入すれば、問題なくできるようになります。立体的に診断できれば、手術の方向性を確実に決定づけることができ、神経や血管を痛めることもありません。だから安定した治療を行うことができます。
歯根部を入れるとき、神経と血管を避けるために、横からのレントゲンと縦の輪切りのレントゲンを撮り、位置と確度を測定しながら行います。このレントゲンが成功率アップに貢献しています。

上顎は骨が密ではなく細くてやわらかいので、下のインプラントよりも難しいといえます。骨は下の方が丈夫ですから、下の成功率のほうが高くなります。

インプラントとは人工の歯根①

インプラントとは人工の歯根です。歯肉を切開してあごの骨に人工的な歯根部を埋め込んで、歯肉でおおうように縫合し、その上に人工歯を取り付ける最新の治療方法です。
入れ歯のようなわずらわしい取り外しも不要ですし、見た目もきれいで、使い心地も入れ歯のような違和感がないのが特長です。また、ブリッジのように、健全な両側の歯をけずって、周囲の歯に負担をかけて弱めるような心配もありません。

インプラントを入れたら、腫れて痛くてどうしようもないという話を耳にすることがありますが、それは疑いもなく失敗です。
歯科医は患者さんに対して、何年後、何十年後まで責任をもたなければなりません。とくにインプラントは、患者さんに金額的に負担を与える治療になります。それを考えるとたいへん責任を感じます。

インプラント治療をするには、歯科医にもかなりの勇気と自信が必要となります。
かつて、インプラント治療は、安定性に欠ける心配がありましたが、最近開発されているインプラントは、すでに世代が違ってきています。
かなり安定性、定着率が高くなっており、ふつうの歯科治療とほとんど変わらないくらいの成功率になりましたから、安心・確実な治療法だといえます。

アフターケアをおこなうかどうかでインプラントの寿命は変わります

ある程度高額なものならば、どんな商品でも大抵は購入者に対してアフターケアを行っているものです。売りっぱなしはいただけません。インプラント治療もしかりだと思います。しかし、残念ながら、手術が終わり治療費を受け取ったら、患者さんに急に冷淡になる、そんな歯科医がいないとも限りません。

インプラント治療は、きちんとアフターケアについて配慮している歯科医院を選ぶべきです。手術直後、患者さんは不安でいっぱいです。これから何に気をつければよいのか、わからないからです。歯科医院の責任として、手術後のケアについて詳しく患者さんに説明する義務があると思います。
インプラント手術が終わった方に対して、必ず丁寧に歯ブラシの仕方を説明することが大事です。

インプラントの10年後の残存率は95%です。残りの5%は、ほとんどが歯周病菌に冒されてインプラントがダメになるケースです。それだけに、歯周病にならないためのブラッシングはとても重要なのです。

さらにすべての方に定期検診(メンテナンス)にお越しいただいて、歯周病の検査や口の中のクリーニング(PMTC)を行うことをおすすめします。PMTCは歯周病予防に大変効果があり、メンテナンスを怠らなければ、インプラントは飛躍的に長持ちします。

気になる治療期間と通院の回数について

治療期間が一体どれくらいかかるのかも気になるところでしょう。

インプラント治療の方法によって多少の違いはありますが、一般的なインプラント治療の場合では、下あごで3ヶ月半、上あごで4ヶ月半くらいです。上顎洞を持ち上げるなど特殊な手術がともなう場合は、プラス1~6ヶ月かかるとお考えください。

このプラスにかかる期間中は、治療のための通院は必要ありません。インプラントと骨が結合するのを待つだけです。

通院回数についても、比較的多い質問です。これは1回法と2回法で異なります。
1回法、2回法というのは手術方法です。
1回法というのは主に簡単なケースでの手術方法で、インプラントの頭の部分を歯ぐきの上に出した状態で手術を終える方法です。

対して2回法は、前歯の場合やGBR法(骨を増やす手術法)、上顎洞を持ち上げる手術をした場合などに行う方法で、インプラント本体をいったん完全に歯ぐきの中に埋め込んでしまいます。そして、しっかり骨と結合したところで、インプラント本体の頭の部分を歯ぐきから露出するための手術を行います。よって手術は2回、そのため2回法というわけです。

1回法では「検査、手術、消毒、型とり、かぶせ物(上部構造)装着」の計6回程度の通院が必要になります。
2回法の場合は、さらに2次手術などが伴い、プラス1回の通院が増えて計7回程度になりますので、参考にしていただければと思います。